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痔でお困りの方へ~切らずに治す1泊痔手術の注射療法について

痔疾(痔)とは、肛門と、その周囲の病気の総称で、肛門部周辺の静脈が圧迫され、血液の流れが滞ることによって発生する疾患です。日本で痔に悩む人は、3人に一人といわれ、症状に出ない人まで含めれば、ほぼ成人の半数の人が痔で悩んでいると言われています。これほど身近な病気ですが、「恥ずかしい」、「すぐに切られるから」と、治療をためらう人が多いようです。

痔疾は、大きく分けて、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3つに分けることができ、排便時の出血や痛み、肛門からの痔核の脱出(脱肛)といった症状に悩まされます。これら痔疾のうち、痔核が約半数程度を占めます。裂肛、痔ろうは、それぞれ1~2割となります。

痔核(いぼ痔)には2種類あります。肛門の内側にイボのようなものが出来るのを内痔核といい、大量に出血することがありますが、痛みが少ないのが特徴です。肛門の外側(触って分かる所)にできるのが外痔核で、肛門部に丸く突き出て、痛みをともないます。

この痔核に対する治療法として、今まで主流であった痔核切除手術の場合は、一週間から10日ほどの入院治療が必要でしたが、最近、痔核切除を必要としない一泊入院の新しい注射療法ができました。これは、腰椎麻酔下で痔核患部に選択的に4カ所に薬剤(ALTA注)を注射する方法です(2006年4月に保険適応)。

この治療は、ALTA注に関する知識と、技術を習得した専門の医師が施行する事ができる治療法で四段階注射療法と呼ばれているものです。

この注射療法を施行すると、痔核からの出血が止まり、痔核は次第に小さく硬くなり、1~2週間ほどで痔核が肛門から飛び出すこともなくなります。

痔核を切除しないため、術後の疼痛も、出血も少ないため、一泊入院が可能で、簡単に治療ができます。また、脱肛を併発した内痔核にも有効な治療法で、痔核切除手術と同様の効果があります。術後には就労もでき、患者さんの負担も軽く、優れた画期的な治療法であり、これから一層普及していくものと思われます。

痔の分類

痔の症状によって治療法が変わってきます

ランク 痔核の症状 痔核の治療
及び手術
入院期間
第1度 たまに出血があり、
肛門の外に脱出しない
坐薬または
軟膏治療
通院
第2度 排便時に脱出するが、
排便後自然に元にもどる
痔核注射療法
(ジオン)
2日間程度の入院
第3度 脱出後、手などで押し込まないともどらない 痔核注射療法
(ジオン)
2日間程度の入院
痔核根治手術 1~2週間の入院
第4度 排便と無関係に常時脱出している 痔核根治手術 1~2週間の入院

痔核注射療法(ジオン)

四段階注射法と治療効果

裂肛

便秘などによって肛門上皮に浅い裂創が生じたものです。排便痔に疼痛と出血を伴います。 軟膏治療や坐薬治療を行います。

肛門周囲膿瘍および痔瘻(じろう)

肛門周囲膿瘍は、肛門部の腫れと疼痛があり、切開排膿が行われます。

痔瘻は、肛門周囲膿瘍の後に移行します。肛門周囲の瘻孔と、肛門内の粘膜と交通している瘻孔で、解放手術が行われます。

痔核に対する手術方法

痔核注射療法 (ジオン注射療法)

ジオン注射療法は認可された医療機関(内痔核治療法研究会会員)でのみ施行できます。(当院は認可医療機関です)

出血や痛みが少なく、腰椎麻酔等の時間も入れて約15分程度と、手術時間が短いのも特徴です。

痔核根治手術 (痔核結紮切除術)

手術時間は腰椎麻酔等の時間も入れて約30分程度です。

痔の予防

日常の生活での予防策としては、1日数回の入浴は効果的で、便秘にならないようにして、過度のいきみをしないようにすることが大事です。アルコールや香辛料のきいた刺激物は控えましょう。

また、食物繊維や水分を多くとって便秘にならないようにしましょう。 肛門付近を清潔に保ちましょう。シャワー式トイレは予防に有効です。

  • 座りっぱなし、立ちっぱなしなど、同じ姿勢は続けない。
  • 硬いイスには座布団を敷く。
  • 腰を冷やさないようにする。
  • 毎日の入浴は欠かさない。
  • アルコールや香辛料のきいた刺激物は控えめにする。
  • 食物繊維の多い食事を取る。
  • 規則正しい生活で、同じ時刻に排便する習慣を付ける。
  • なるべく洋式のトイレを使う。
  • トイレで強くいきまない。
  • 肛門付近を清潔に保つ。ただし、排便後、紙で強く拭きすぎないようにする。シャワー式トイレは予防に有効。